2017-07

「1789 バスティーユの恋人たち」4/27マチネ

日本初演の「1789 バスティーユの恋人たち」は、役者さんの熱量がストレートに伝わってくる熱い舞台でした。東宝版は、登場人物の設定変更や追加を施すことで恋愛要素を強調し、美しさを追及したという感じ。どの場面もカッコいいPVを見ているような作りのオリジナル版とは、別物として見た方がいいかなという感じでした。

【主な出演】
ロナン(加藤和樹)/オランプ(夢咲ねね)/ロベスピエール(古川雄大)/ダントン(上原理生)/デムーラン(渡辺大輔)/ソレーヌ(ソニン)/アルトワ伯(吉野圭吾)/ラマール(坂元健児)/フェルゼン伯(広瀬友祐)/ペイロール(岡幸二郎)/マリー・アントワネット(花總まり)

加藤ロナン
「レディ・ベス」のロビン以来の加藤さんですが、演技も歌もダンスも格段とうまくなっていました。この人が演じる”粗野だけど優しさを秘めた好青年”は、どストライクではまります。

夢咲オランプ
可憐だけれど芯が強いオランプにぴったり。アントワネットへの忠誠心の高さが特にツボでした。深く膝を折るお辞儀がきれい。

古川ロベスピエール
相変わらずのスタイルの良さに加え、強い目力。古川君がロベスピエールと聞いた時は、サンジュストの間違いじゃないの?と思ったものですが、作中どこかで仲間達と距離を置く独自の存在感は、ダントン達と袂を分かつことになる未来を暗示しているようなかなかの好演でした。ダンスではセンターを任され、古川君のいいところが最大限活かされていました。

上原ダントン
相変わらずの美声。踊っている上原さん初めて観たかも!

渡辺デムーラン
全編を通じていい人オーラ全開。ロナンの死の間際の早口の「ダメだ、ダメだ、ダメだ」が妙にツボ。

ソニンソレーヌ
歌唱場面では、タフでパワフルなソニンの持ち味が出ていました。

吉野王弟殿下
観ていてついクスってなる独特のセンスを封印しストレートにヒールを演じる吉野さんが新鮮。でもダンスシーンがないのが残念。華麗なマント裁きとお辞儀だけでは寂しい。

坂元ラマーヌ
思いの外歌唱シーンが多く、美声堪能しました。一方、催眠術にめちゃかかりやすいし、媚薬をスライディングして飲むし、ついついクセになるサカケンワールドでした。「三銃士」のジェイムズを思い出しました。

広瀬フェルゼン
北欧人のような体格の良さ。そして、育ちがよさそうなおっとりした雰囲気がいかにもフェルゼンぽかった。花總さんとの並びは美しくて眼福でした。

岡ペイロール
久しぶりに拝見する岡さんでしたが、圧倒的な声量と声の圧でした。そして華麗な鞭裁き、ロナンの腰にちゃんと巻き付いていすげえ。ちょっと言っちゃえ、シルエットがジャベールでした。

花總マリー
鉄板でした。「すべてを賭けて」の登場シーン、巨大なパニエのドレスを着てあの高い場所でスタンバイするのってすごい!!さすが宝塚の大階段を降り慣れただけある。でも、全体的に演技が大袈裟な気が。

【カーテンコール】
吉野さんと岡さんが一緒に出てきて眼福。吉野さんと古川君の並びも眼福。吉野さんは古川君に何を話しかけているんだろう。上手に捌ける花總さんをエスコートする岡さんが優美。
最後は加藤、花房、夢咲の3人で出てきてくれました。加藤君を真ん中に3人で手をつないで下手へ。

【その他イロイロ】
・ギロチンの使われ方が印象的。ギロチンの試作が繰り返される間、アントワネットも人として王妃として成長を遂げます。でも国王夫妻がギロチンで処刑される運命にあると知っている観客としては、時間をかけて寄り添い合うになった二人が何とも哀れでした。

「すべてを賭けて」
・youtubeで観たこの場面だけで「1789」のDVDを買ってしまった位、大大大好きな場面。アントワネットはキュートでしたが、華やかさの裏にある色恋沙汰や権謀術数が透けて見えてこなくて、私的に残念。
・秘密警察3人組の衣装の素材が・・・18世紀の物語なのだから。服地で作りましょうよ。

「パレ・ロワイヤルの隅」
・夢咲オランプのわざとらしい「た~すけ~て~~」に笑った。
・「何なんだよこの女!」って不快感があからさまな加藤ロナン。もナイス

「ロナンの牢獄」
・囚人が自力で移動させる監房の格子がしょぼすぎ。
・岡ペイロール×加藤ロナンの歌対決の緊張感。
・オランプの男装は「レディ・ベス」みたいだった。

「ジュ・ド・ポーム」
・ダンス大迫力でした。
・「そんな・・・」ルイ16世の国民議会を認めない発言に対するシトワイヤンのリアクション。弱弱しい感じで好みじゃない。

「子役」
・ルイ・ジョゼフがけなげ過ぎて泣ける。
・シャルロットは幼すぎかな。娼婦や革命家と共生する彼女のたくましさやおませさ、何よりダントンとの深い関係性がほしかった。

「その他」
・「どこでもドア」を使っているのかと思うほど、簡単に遠距離移動する登場人物達。遠隔地勤務なのにやたらアントワネットの周辺に出没するフェルゼン。王太子付なのにベルサイユとパリを頻繁に行き来するオランプ。文無しなのにあっという間にパリからサン・ドニに行けるロナン(パリ-サン・ドニ間って現代でもメトロで小1時間かかるのだが)。
・舞台とわかっていても、社会人としてどうよ?と感じてしまうこの2人。何度も任地を抜け出してアントワネットのもとに現れるフェルゼン。娘の一言で囚人の脱走に手を貸すオランプの父。

日本版についてあれこれ思うところはあるけれど、すばらしい曲の数々を肉眼で観ることができて楽しかったです。

以下、あれこれ思うところ。
オリジナル版大好きの私が感じたことを勝手に綴っていますので読まれる際にはご注意ください。 「強過ぎる恋愛要素」
 オリジナル版の恋愛の主軸はロナン&オランプ、アントワネット&フェルゼンでしたが、東宝版ではダントン&ソレーヌ、デムーラン&リュシュル(東宝版のみ登場)も加わり、恋愛花盛りでした。これもありだと思うのですが、この設定変更で、各登場人物の見せ場であるソロが大幅に変更されてしまったことに違和感を覚えました。

(パレ・ロワイヤル)
・オリジナルは、ダントン、大道芸人、娼婦達が繰り広げる享楽的なお祭り騒ぎ(娼婦のお姉さん達のダンスがパワフルでセクシー)。女好きのしようもないダントンですが、シャルロットを配置することで、子供にも慕われるイイ男っぷりが伝わってきました。
・東宝版では、デムーランとロナンも一緒に登場するので、3人の友情が強く打ち出された爽やかな場面となっていました。まあ、出だしを「ダント~ン」じゃなくて「パレ・ロワイヤ~ル」に変えている位だから、仕方ないのか。

(ジュ・ヴ・ル・モンド)
・東宝版のソレーヌは、ダントンの力添えで娼婦稼業から足を洗い、カフェで働き始めます。人並みな暮らしを手に入れた彼女が歌う「ジュ・ヴ・ル・モンド」はどうも馴染まない。パン屋襲撃までの伏線もないので、突然女性の権利だけを強く主張する歌詞も馴染まない。一番馴染まないのは、最後にパン屋と和解してしまうこと。だったらやるなよと、苦笑するしかなかったです。女たちを率いてパン屋を襲い、そのままヴェルサイユへなだれ込むオリジナル版の方が説得力がありました。

(サ・イラ・モナムール)
元々デムーランのソロだった「サ・イラ・モナムール」。東宝版では、”清廉の士”ロベスピエールにまで突如彼女が現れ、舞台上はカップルで埋め尽くされます。これが小池さんの訴えたいことなんだろうなというのはわかるのですが、抱き合いキスをするカップル達をずっと見続けるのは退屈。

「”平等”なソロシーン」
主な登場人物に用意されているソロですが、東宝版ではダントン、デムーラン、ロベスピエールがほぼ3人セットで登場します。もちろんその曲の軸となるキャストがセンターに立つけれど、舞台上には必ず他の2人がいるので、どうもメリハリがなくて印象がぼやけてしまいました。

「平民VS農民」
劇中で繰り返し出てくるプチ・ブルジョワVS農民の構図も、不自然に感じました。なぜかというと、字が読めるというロナンの設定。18世紀のパリの識字率はわずか10%だそうで、地方の農民の子供が文字を読めるというのはまずありえない。あったとしても、子供が教育を受けられるだけの余裕がある家の生まれだったのではということで、本当に飢えるような貧農だったの?という疑問を感じました。ついでに言えば、6才で母と死に別れ、父は失踪、祖父母に育てられたロベスピエールは、自分の努力と才能で道を切り開いてきた人で、ロナンから信頼こそ受けても「やっぱりブルジョワだから」と非難される謂れはないのではと感じます。

「神様の裁き」
ドレスから鬘まで身ぐるみ剥がされながら歌い続けるオリジナル版のアントワネット、秀逸なシーンでした。東宝版では豪華なドレスのまま歌います。これでもアントワネットの心情は十分伝わってくるものの、シンプルなのに印象深いオリジナル版演出と比べると平凡に映ってしまいます。宝塚ではないのだから、リアルな演出でもよかったのではと感じました。

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